生まれて初めてあたしが愛した人は
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特攻隊員だった。
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大きな愛を胸に秘めた、優しくて強い、あたたかい人。
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あたしの大切な人。
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彼は、あたしと出会ったときには
もうすでに死を覚悟していた。
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そんな序章から始まる、この物語のタイトルは『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』。
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十八年前に上辞された、汐見夏衛さんの処女作で、第二次世界大戦末期の一九四五年の日本にタイムスリップした現代の女子中学生・加納百合と特攻隊の青年・佐久間彰との時空を越えた、
切ない恋を書いた作品で、昨冬には映画化されました。
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天皇陛下の御為に、大日本帝?國の為に、国民の為に、昭和初期に戦場で命を散らす事は名誉であるという価値観の時代に育った、その多くが十代後半から二十代の青年達で構成された、大日本帝??國海?軍によって考案されたー、戦死を必至とする、神風特別攻撃隊ー。
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攻撃対象は、敵国の船艦のエンジン。
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軍の上層部によって考えられたこの戦法は、爆装航空機による敵国の船艦に自分達の機体を突っ込ませる自殺行為同然の体当たり攻撃。
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詰め込まれたのは、行きの燃料だけー。
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決して、生きては帰れない作戦。
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多くの若者を死に向かわせたこの上なく愚かな作戦によって、余りにもたくさんの尊い命が犠牲となっただけでなく、残された人達の人生に生涯癒える事のない大きな悲しみを齎しました。
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出撃が決まると、家族や恋人に手紙を書き、この物語の中にもその場面があるのですが、青年達は美しく散る事を大切な人達に誓い元気に「行ってきます」と報告し、「おめでとうございます」と祝われ送り出されるー。
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ちょうど八十年前の今日の一九四四年十月二十五日は、特攻隊の第一陣が出撃した日です。
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人間を兵器の一部に組み込んでまで戦おうとする時点で勝算はなかったはずー。
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特攻隊の父と呼ばれ海軍の中将であった、大西瀧治郎は、敗戦を知った時、そんな非道な戦法を認め続けた人物とは思えないほどの冷静な筆致で綴られた遺書には自身の軽挙への戒め、犠牲にした特攻隊員達と遺族への謝罪、世界平和を願う言葉が書かれ、一切の弁明をせず、大西氏は作法通りに切腹をしますがー、特攻で死なせた青年達を思い、自らは長く苦しんで死ぬべきだとして介錯を断り、腸も飛び出す中十時間もの間苦しんだ末に息を引き取られたとのこと ー。
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今日は特攻隊員達だけでなく、今尚国内外から強い批判を浴びている大西氏の為にも、天国では全ての魂が安らかでありますように、今度生まれ変わった時は平和な世界で穏やかに生きられますように…祈りたいと思います。
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こちらの映画をご覧になられたお客様はいらっしゃいますか?
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そして、昨日、今回の出勤は31日(木)までとこちらでお伝えしたばかりだったのですが…、11月4日(月)まで、続けてお店に出させていただける事になりました。
それでは、お日付変わり…本日も皆様よろしくお願いいたします。
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冒頭のプロローグには続きがあります。
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「愛する人たちを守るために俺は死にに征くよ」
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揺るぎない瞳で、そんな悲しいことを言った。
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「行かないで」
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泣いてすがるあたしを、彼はただ静かな眼差しであたしを包み込むだけで………。
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そして、ある夏の日、恐いくらい綺麗に晴れた青空の向こうへ、消えていった―――。
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ねえ、彰。
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あたしの声が聞こえますか。
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今、あなたはどこにいるの?
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そこは、痛みも苦しみもない、
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安らかな場所ですか?
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風に吹かれる花びらのように
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儚く散ってしまったあなたが
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せめて今は
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穏やかに眠っていることを祈ります――
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